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□    SSS①
扉の外は、黄昏時の空だった。透けた手の平の向こうに暮れる陽を垣間見ながら、動けなかった男のことを考える。『あれ』は、流れるままに存在を換えていく事よりも幸福だろうか?あるいは、自分自身もあのなかに"可視の音"とでも銘打たれて留まり続ければ、消え失せる恐怖からは解放されるだろうか?

(‥‥‥考えるだけで頭痛くなってくるな) フード越しに髪を掻き上げれば、疾る夜風に煽られて身体が風を受ける。物理法則の通用しないこの状態が、見た目の通り全くの自由であるのかふと思案して結局は止めた。それは、あの店の主人が既に答えを出していそうだから、というささいな負け惜しみからだった。 (ロイエ独白(+白猫))

悪意の対流したような空気の中に、一筋甘い香が漂う。足下へどうにか届く街頭の明かりに、子猫の尾が揺れる幻覚を見た。「(・・・・・子供はこわいからねぇ)」 お互いの領分へさえ入り込まなければ無視が性分。自分も随分甘くなったが、あの仔を誘い出すのはさて何だろうかと、考える位なら良いだろう?

氷を突き立てられたような悪寒は今更珍しいものではない。お得意の逃亡劇に、少々のスリルが混じるだけ。ただ、彼女の抱く冷たい愛はやがて、自分の持つどす黒く上澄みの泡のように軽薄な熱とこの小さな手が凍り付いても握り締め続ける執着によって薄く頼りなく、鋭い刃のかたちへ変わっていくだろう。 (グォイ独白(+嗤市))

硝子の天窓を設えた図書館の一角が、ふと蒼い陰に満たされた。水底に注ぐ陽光を背に受けて、白い鱗の乱反射だけが時折書物の背表紙に跳ねて砕ける。異形の魚は、はるか下方にちらと見えた青髪の王に向かって暢気に手を振ると海流の果てへ夢のようにに消え去り、後にはマリンスノーに混ざって銀の粒子だけが降り注いでいた。 (アノーマリー+オルカ)
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□    SSSⅡ
ぎり、と噛み締めた歯列を解くように舌でなぞる。髪飾りで押さえられたベールを剥がせば、飴細工のよう両眼へ嫌悪の色が宿るのが確認できた。抵抗のつもりなのか、渾身の微力をもって蹴り付けてきたブーツの脚も自らの身体で割り開かれている。「・・・餓鬼」 獣が嗤った。

「そうやって、ずっと甘い匂いだけ振り撒いてきたのか」 柔肌が、慣れぬ行為で浮き立つ汗に濡れて得も言われぬ芳香を放つ。調合された偽りのそれではない、生きた熱量。「散々周りの奴にお預け食わして、ガラスケースの中に居たのはてめぇじゃねーか」 くっ、と煽る声音が低く響いた。

ぎゅうと閉じられた唇は悪態を吐かれるその一瞬の間に塞ぐ事が出来た。野郎に舌を食いちぎられるという不名誉な傷を負わないよう賺さず低温の粘膜を自分の咥内へ引き込んでやる。無防備な下蓋から裏側までを舐めあげ、細腰が反るほど抱きすくめると胸元を掴んでいた腕が縋るように垂れた。

下腹部に手を当てただけで、相変わらず細っこい脚が宙を掻く。「止めろよ本当にっ・・・服が、汚れるから」 驚くほど中身の無い拒絶の文句にこいつの中身を占める件の人形屋の影を見た。じゃあ全裸にするか返す気も無くし、興の醒めたのを八つ当たりにきつく服の上から擦り付ける事にした。

割り込まれた脚の間で、コルセットが型くずれしそうなほど強く膝を押しつけられたのは気のせいではない。びくり、と相手の肩や胸を殴りつけていた拳が停止し、逃げ場を求めて絨毯敷きの地面を掻く。その両腕を頭上に押さえつけて完全に固定し、開いた片手で腰を掴んでゆるりと押しつけた。

普段は覆い隠されている首筋を、水音を立てて吸われる。背を伝うような熱が濁り、そうして広がっていく感覚にもう先程までの冷たい疼痛は無かった。ただ、長く骨張った指が滑る骨の浮いた胸元が、唇で辿られる茎の根本が、そのもう少し奥にある得体の知れない熱源が、どうしても苦しかった。

ゆるゆるとした屹立は見られるものの、件の少年はまるで傷口でも弄られているかのように悲痛な呻きを噛み殺すばかりだった。(・・・傷付くねぇ) こっちにもプライドってもんががあるんだから、と一人ごちて濡れた舌先を鈴口に埋めれば、銀糸の髪を乱れさせて必死に腰を引こうと藻掻いた。

「ん、 ‥‥っふ」 散々に舐め熔かしたそれを敢えて一気にくわえ込み、喉の奥に最も敏感な粘膜を押し当てる。柔らかく張った陰嚢は舌で擦り、咥内を締めながら啜ることで吐精を促してやれば、未知の感覚に瞳が揺れているのが見えた。うす苦い、とろりとした体液が猫の口蓋に広がった。 (猫+eatmy)

無理矢理に息を吐く肺が痛い。「ひ‥‥っ う、ト モエ‥‥」 否、先程から何度も逡巡して、誰の名も乗せずに絞り出す声が、骨の中まで染み通っていくような空虚が、ただ痛かった。「っ、 あ   、――ッ  あ‥‥‥」 人形の持つ硝子の両眼を、凍りつく程の涙が塗り潰していった。 (eatmy独白)

首を仰け反らせ、可哀相なほどに全身を揺らして刺激に耐える目の前の餓鬼の眼に、さて自分はどう映っているのかと柄にもなく考える。人形だとかいう化けの皮をあっさり剥がされた、どうしようもなく非力で隔絶に甘んじる、ただそれだけのクソ餓鬼。(・・・非力?) 厭な声が、聞こえた。 (猫独白)

「‥‥あーあ、こんなに食い散らかして」 うんざりした言葉の通り、纏った衣服は強引に破りとられ精巧なつくりの髪飾りも見る影はない。依然押し倒された状態の少年は白い胸を晒したまま香炉の蓋を開け、男の傍へ引き寄せた。「―――好いよ、腹ぺこの坊や」 寂しかったね、と嫣然に。 (分岐b eatmy+猫)
□    SSSⅠ
小さく口づけを施した少女の眠たげな瞳には薄暗い一室が映り込んでいた。長い髪の魔法使いが意地悪げに微笑む。哀れなお嬢さん、薬草の苗床にしてやろう。眠りを知らない踊り子人形に変えても良い。いっそこのちっぽけなコウモリの羽をはやしたにせものの妖精にでも仕立ててしまおうか?

薄気味悪い囁きは、しかし秘密めいて花開き非日常の薫りを漂わせる。その力無く座り込んだ膝の上、白いレースの首輪を着けた子猫が不服そうに自らの尾を一瞥してそっとすべり降りた。「(可愛い顔して被飼願望ね・・・)」 お伽の国へご案内、と吐き捨てる声は可憐な鳴き声ではなかった。 (eatmy+少女)

柔らかな吐息が触れ、意識の奔流に飲み込まれる。自分を取り巻いているのはどうやら硬質の冷気の様だった。視界に広がる滑らかな光、それを挟んでこちらを覗き込んでいるのは―― 「‥‥俺、か?」 きわめて珍しく、人の形をとって介入する視点。身なりの良い少年の姿をしている。

腰掛けたままの姿勢と、それを覗き込む霞がかった誰かの影。長い、陶酔にも似た共有感覚は少女独特の温度に乏しいように思えた。   「‥‥‥‥さっき送った子、居ただろ」 馬鹿馬鹿しい仮定だ。それでも、あの光景に意味を見出だそうと心がざわつく。 「あれ、よく調べておいてよ」 (宝石人形+eatmy)

・・・変な子だとは思っていた。つい先程交わした筈の景色がもう朧気に薄れている。何も聞こえないどこかで、向かいに座る誰かを見ていた感覚だけ。視線を彷徨わせ、膝に重ねた自分の手、それから相手の胸元の、黒い襟ばかり交互に視界に浮かべていた。取り落としたナイフの銀に、ふと目眩を覚える。 (eatmy+嗤殺猫市)

「・・・"la petite mort "のリストを」電話を置いた店主は無言で厚い冊子を捲る。名前の横に添えられた写真には、羽根や毛皮を纏う小動物のような姿が映し出されている。無表情だか穏やかな微笑みを浮かべているようにも見える、その少女は間違いなく巴が送り出した人形だった。 (巴 共闘企画より)

空間を境目無く埋め尽くす色彩の渦から逃げ付いた先は、闇の底のような静まりかえったフロアだった。磨き上げられた扉も暗さの為か景色を映さない・・・否、この一体が穴ぐらの行き止まりではなく未だ入り口、夢の世界へのきざはしであることを、恐らくは渡り廊下の最端に佇む白い人影が伝えていた。 (eatmy+上層階スタッフ)

本から本まではしけをかけた本の山を並べて詰んだ。革のソファは読みつぶした聖書のペェジを丸めて磨くのがいんちきだけど綺麗になる方法だ。ランプの球へ湖を詰めよう。床がまた白になったから花弁を踏んでオイルをかける。「お誕生日でない人の名札がないな」あとは女王様が開けてくれればしまいだ。 (トランプⅤ独白)

少女の言葉は閃星灯の下で空気砲のように何度も弾け、その度に錫螢が慌てて傘のなかへ逃げ込む。炭酸水のグラスには触れず、懐紙に盛られた色硝子のような破片をそのまま飲み込んだ。「"土星の輪"を無闇に食べてはだめですよ」吐き出した溜息は、既に声ではなく小さな光を含んだ煙りに変わっていた。 (?+少女)
□    SSS10
ゾブリ、としないはずの咀嚼音を滲ませて、コートを払い落とされた生身の肩へ黒い塊が喰らいつく。何かを飲み込んでバネ仕掛けのように跳ね戻った先は、その化け物よりも陰欝な視線を宿した男だった。獲物を『得た』様子の男の背後に、白い影がひっそりと張り付いていることに双方は気付いているだろうか。

いいなあいいなあいらないこれ以上煩くなるのは御免だほしいほしいきっとおいしい。高く低く、ぐわんと哭くような呻きが二重になった瞬間、衝撃のままに崩れ落ちた少女の体から弾けるような霧の奔流が生まれた。流れ落ちる先は男の痩せた腕の中か、闇を背負った瞳の奥か。倒れ伏す少女が片手を着いた。

「な・・・・」殆ど息を吐くような言葉は最早相手に届かない。「な   ん、」両の腕で体を支えてはいるが、顔を上げる気力すら失っている。「な   ん      ちゃっ        て♪」  ・・・・・まるで異質に漏れる呟きが、何故かとうに背を向けた伊啓のすぐ傍で聞こえた気がした。じわり、じわりと霧が漏れ出していく。

「ピエロが居て良かった事など何もない。負の感情ばかり押し付けられる、ですか」さながら致命傷を受け血を流すかの如く、濃霧に包まれ膝をつき激しく喘ぐ男を先程とは逆に増長は見下ろした。大仰な動作で体を引けば、霧の束は巻き戻しのように未熟な持ち主へ返る。足元で、慣れていない異物を引きはがされた苦しみの呻きが上がった。

「おいしいものは独り占めするし、嫌いなものは押し付けますよ。幼い子供にはよくあることです」見開かれた金の瞳は少女と、その意識に淀む悪意を見たのだ。「で、そんなに楽しそうに見えたんすか。吹き出しさんと居る小生は」きらきらと光を反射して、膨大な"見えざる凶器"は伊啓へ向かって流れ出した。 (増長+伊啓)
□    SSS9
「気乗りしないすね」お情けのバリケードを一瞥してコート姿の生徒が呟いた。やむなしの共同戦線という提案も殆ど聞き流していた彼女は逆向きの気怠い姿勢で椅子へ腰掛ける。「策を弄じるだけなら生きてる限り無駄ですよ。対策しようとする、無視しようとする、同じ土俵に上がろうとする、傍観しようとする」 

「仮に誰かと潰し合うのを待ってもそこに皇さんへの介在が生まれる。頭から追い出すのも駄目。考えないようにしている、と考えないようにしている。ほら手詰まりだ」 しん、と静まり返った空気など気にならないのか言葉を続けながら椅子をガタガタと揺らす。「重力に逆らった所で徒労で終わりですよ」 (増長+?)

「失礼ながら、貴方の生まれは特殊です。この状況を打破するだけの力が望める」 「でも、まあちゃんみたいなこと出来ないよ」 「僕は往生際が悪いだけの人間ですから‥‥行きますよ!」 人為らざる遺伝子を抱いた少女の手を、人からほんの少し離れた能力を手にした人間は強く握り締めた。 (増長+夜臼)

「ライン化された単一な力は、数の面では効果的な威力を誇りますがパターンとして見れば穴だらけです。まあ小生見ての通りか弱いんでぶちのめすなら平和的に弁舌でもぶっててくださいよ。ね?」 悠長に語りかける仕草に敵意が滲む。錆走る刃は、その冷たさが見えないほど鋼鉄のワイヤーによって雁字搦めに捕らえられていた。 (増長+赤嶺)

陰惨な空の下、二人分の影が僅かな陽に伸びていた。「死体を避けて屋上でサボりとはねぇ」「ふふ」銀髪の少年へコート姿の誰かが暢気に呟く。「それで、『腹括った』ってのは」「あなたと同じですよ」す、と立ち上がった"生徒"は、微かに微笑んで言った。「あの人はもう駄目だ。僕が潰す」 (増長+哀川)
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