ぎり、と噛み締めた歯列を解くように舌でなぞる。髪飾りで押さえられたベールを剥がせば、飴細工のよう両眼へ嫌悪の色が宿るのが確認できた。抵抗のつもりなのか、渾身の微力をもって蹴り付けてきたブーツの脚も自らの身体で割り開かれている。「・・・餓鬼」 獣が嗤った。
「そうやって、ずっと甘い匂いだけ振り撒いてきたのか」 柔肌が、慣れぬ行為で浮き立つ汗に濡れて得も言われぬ芳香を放つ。調合された偽りのそれではない、生きた熱量。「散々周りの奴にお預け食わして、ガラスケースの中に居たのはてめぇじゃねーか」 くっ、と煽る声音が低く響いた。
ぎゅうと閉じられた唇は悪態を吐かれるその一瞬の間に塞ぐ事が出来た。野郎に舌を食いちぎられるという不名誉な傷を負わないよう賺さず低温の粘膜を自分の咥内へ引き込んでやる。無防備な下蓋から裏側までを舐めあげ、細腰が反るほど抱きすくめると胸元を掴んでいた腕が縋るように垂れた。
下腹部に手を当てただけで、相変わらず細っこい脚が宙を掻く。「止めろよ本当にっ・・・服が、汚れるから」 驚くほど中身の無い拒絶の文句にこいつの中身を占める件の人形屋の影を見た。じゃあ全裸にするか返す気も無くし、興の醒めたのを八つ当たりにきつく服の上から擦り付ける事にした。
割り込まれた脚の間で、コルセットが型くずれしそうなほど強く膝を押しつけられたのは気のせいではない。びくり、と相手の肩や胸を殴りつけていた拳が停止し、逃げ場を求めて絨毯敷きの地面を掻く。その両腕を頭上に押さえつけて完全に固定し、開いた片手で腰を掴んでゆるりと押しつけた。
普段は覆い隠されている首筋を、水音を立てて吸われる。背を伝うような熱が濁り、そうして広がっていく感覚にもう先程までの冷たい疼痛は無かった。ただ、長く骨張った指が滑る骨の浮いた胸元が、唇で辿られる茎の根本が、そのもう少し奥にある得体の知れない熱源が、どうしても苦しかった。
ゆるゆるとした屹立は見られるものの、件の少年はまるで傷口でも弄られているかのように悲痛な呻きを噛み殺すばかりだった。(・・・傷付くねぇ) こっちにもプライドってもんががあるんだから、と一人ごちて濡れた舌先を鈴口に埋めれば、銀糸の髪を乱れさせて必死に腰を引こうと藻掻いた。
「ん、 ‥‥っふ」 散々に舐め熔かしたそれを敢えて一気にくわえ込み、喉の奥に最も敏感な粘膜を押し当てる。柔らかく張った陰嚢は舌で擦り、咥内を締めながら啜ることで吐精を促してやれば、未知の感覚に瞳が揺れているのが見えた。うす苦い、とろりとした体液が猫の口蓋に広がった。 (猫+eatmy)
無理矢理に息を吐く肺が痛い。「ひ‥‥っ う、ト モエ‥‥」 否、先程から何度も逡巡して、誰の名も乗せずに絞り出す声が、骨の中まで染み通っていくような空虚が、ただ痛かった。「っ、 あ 、――ッ あ‥‥‥」 人形の持つ硝子の両眼を、凍りつく程の涙が塗り潰していった。 (eatmy独白)
首を仰け反らせ、可哀相なほどに全身を揺らして刺激に耐える目の前の餓鬼の眼に、さて自分はどう映っているのかと柄にもなく考える。人形だとかいう化けの皮をあっさり剥がされた、どうしようもなく非力で隔絶に甘んじる、ただそれだけのクソ餓鬼。(・・・非力?) 厭な声が、聞こえた。 (猫独白)
「‥‥あーあ、こんなに食い散らかして」 うんざりした言葉の通り、纏った衣服は強引に破りとられ精巧なつくりの髪飾りも見る影はない。依然押し倒された状態の少年は白い胸を晒したまま香炉の蓋を開け、男の傍へ引き寄せた。「―――好いよ、腹ぺこの坊や」 寂しかったね、と嫣然に。 (分岐b eatmy+猫)
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