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「‥‥痛て」 跳ねた髪は、乱暴に指を通した程度では戻らない。図書室の木の床は、喧騒も衝撃も吸い込んで静まり返る。粗野なヒーローは情緒もなく奪還を決行し、取り残された増長はヘラヘラと笑って一人寝返りを打った。突き倒された体勢は、降参と称賛のハンズアップ。「どーでも良いのに、燃えてきた‥‥‥‥っすね」持ち札は少ない。逃げの一手で、あの殺意の眼をかい潜ろう。(増長+騎士+猫市)

「飄々としてる振りは楽しい?無理した客観視にしがみついてさ」ひゅん、と飛んだ矢印を正眼で二本の指がつかみ取る。言葉の通り座標軸までも否定して、躊躇無く口に含むと何の不思議もなく飲み込んだ。すっかり取り込んでしまってから、増長は薄く笑って返答した。「ええ、ですから小生修行中です故」「ほんと、もうじき溜め込んでおかしくなるわよ、それ」(増長+津々)

挑戦的な口調に思案する。昼食代わりの菓子は、これが最後の一本。先端を食むそれを、要求通り差し出した。机に手を掛けて身を寄せ、躊躇無く端を口にするや否や、拒むようにふいと首を振ればあっけなくビスケットは非対称に折れた。「先に折りましたね」「取り分はこっちの勝ちっすよ」はいご馳走様と理科室を後にする生徒の意図は、やはり読めない。(増長+皇  VDネタ)

親しげに腰の辺りへ回された腕は、雛鳥のように柔らかくか細い。血の澱る匂いにゆっくりと砂糖菓子の粒が螺旋に絡まって、陽光のなかへ立ち昇るような甘ったるさが薫った。寄る辺無いこの箱庭のなかに、数刻前までお腹が空いていたという点できっと彼女と自分は繋がっている。(哀川独白(+夜臼)
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