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記憶が死んで転がっている。抽象的な情景が重なって、一時その者を覆い隠した。逆行に意識を引き戻されれば、場違いに腰掛けた増長は同じ様に夢の終わりを哭いているのが見える。涙もなく。「‥‥‥この獣の仔が夜臼さんだそうです。迂闊だった。今だに実験を受けていたとは」人から剥離したものが二つ、時を隔てて、それでも未だ交わる事は無い。(増長+夜臼  獣化実験ネタIF)

「‥‥‥‥‥もう少し理性的だと思っていましたよ」不快さの滲む男の声は、さんざ想定した物とは違い呆気ない程人間的であった。もとより、もう嘲笑や侮蔑の類を吸収する隙間は用意出来ない。ここに有るのはあと一つ。(自分も、それ以外も、均しく凡人だ)現象の波に分断されたセル状の世界が眼底を冷やしていく。その奥へ、指先から這い昇る熱が到達しつつある。白い腐肉を刻む音のなかで、己の指だけが赤かった。(増長+皇(+夜臼) 夜臼脱落END カニバIF)

「どうです、信念のかけらも無い眼でしょう」 言葉の通り、分厚いレンズの奥には埃と本の背表紙との積層を思わせる淀みがあった。「こんな面白くない物が顔に嵌まっている。それよりねえ、貴方こそ」―いい物をお持ちなのに、お忘れで居らっしゃる。ああまだ手付かずなのですか、と合わせ鏡の黒に一切の意識を塗り込めて、ただ色無き瞳の困惑が刻み込まれていた。(増長+鏡藍)

手首に近い腕に、圧力が沈む。犬のように首を引いて感触を確かめ、麻痺した皮膚には体温を固めた舌が跡を探して滑る。「‥‥‥痛くなかったでしょう。皮下組織は、意外と刺激に堪えるものです」触れた指先は、薄くなった印を隠している。「ほんとうだね、びっくりした」「‥‥はい」穏やかな言葉の中で、この唐突な行為の理由だけは、語られなかった。(増長+夜臼)

「‥‥‥好きですよ。君が好きです。でも、君について知らない事があるうちは、君を好きだと言えない。君みたいになりたい。博愛精神のかけらも無いけど、頑張ってみる。でも、君がどんな風に出来ているか、知らな過ぎる、君になりたいから、手伝ってほしい」たどたどしい言葉に、あまりにも遠すぎるものを感じた。もう限界なのだ。わたしたちが立っている場所は。(増長+夜臼 増長男体化ネタIF ヤンデレ派生:同調型)

「駄目なんだ。ずっと、静かにいたのに、自分と誰かが関わって、幸せな事じゃないって知ってる、俺は、ごめんなさい、貴方を大切に出来ない。呪われようが、憎まれようが、気持ちは諦めた。ただ、俺に貴方の全てが向けられる事しか望めない」目茶苦茶な想いの塊が、私を避けてぶつけられる。恐らくは、その破片で私が埋もれるまで、ずっと。(増長+夜臼 増長男体化ネタIF ヤンデレ派生:狂乱型)

「僕はね、とんだクズなんです。夜臼さんが目を向けるものなら、人でも物でも消えてなくなるべきで、夜臼さんが気にかけた事、現象でも概念でも葬り去りたい。そしてこんな、人間の腐ったような奴に、愛されて目茶苦茶に破滅していく夜臼さんなら、もっといいと思うんです」うそだ。見えてるのは、泣いて責める私の姿だけ。それをどこかで望んでいる私はいま消えて、そうして"可哀相な私"の演者に選ばれた。(増長+夜臼 増長男体化ネタIF ヤンデレ派生:破滅型)

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