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□    Copperius
軽い足音が廊下に沿って遠のいていく。
今し方、きつい仕置きを喰らった増長は受けた勢いのままに軽く首を傾け、無気力な苦笑を浮かべたまま頭を掻いた。背の高さが違うこと、かなり相手が動揺していたことなどを含めて叩かれた痛みはそれほど甚大ではない。頬に跡も残らないだろう。スキンシップだと思えば正直、悪くない。しかしまあ、自分よりも相手にアフターフォローが必要になってしまったなと一人ごちて出ていった扉を見やれば、教室の中はこの騒ぎが起こるまでは特に気にもとめていなかったのか、突然の叫び声に驚いて振り返ったのが半数。あ、またこいつ何かしたなと普段の動向を認知しており白い眼を向けるのが少数。取り残されて視線を一身に受けるのは、いつものコートと制服に足された左手のパペット人形だった。デフォルメ化された丸耳の鼠は、呑気に大きな口をぱくつかせて弁護のようにおどけてみせる。
その言い訳を聞くことになったのは、入れ替わりのように先ほど開け放たれた後部の扉から表れた白い人影。外見はよく似ているがれっきとした先輩であり、例によってささいな誤解と騒動を招いてしまった人でもある。あ、真っ直ぐこちらに来ましたね。そうです、小生です。またやらかしました。
「・・・ええと、ゆうちゃんがこっちの教室に来たんだけど」
「はい、尻尾に誘われました。動物の猫でも尻尾をつままれたら怒りますよね」
「寄りによってしっぽか・・・・・」
ふざける気は無いと潔く鼠をひっぺがす。つまらない役目を終えたそれは支えを失って反省するように頭を垂れた。どうやらその悪戯の手口に気付いたのか、思わず先輩も痛い目を見せられた少女に同情するように口を押さえる。
「気持ちは判らなくもないけど、ねぇ」
「度が過ぎましたね。不織布にニードル加工用の羊毛を貼り付けたので、痛い筈は無いだろうと思ったのですが」
そういう問題じゃないかぁと差し込み式の口を開いてわざとらしく中を確かめる。薄い朱の布地は確かに柔らかそうではあるが、刺激そのものに弱いとなれば特に意味を成さない。女の子には優しくなければいけない、虐め抜く覚悟と誠意が無いのなら。いや、あるなら尚のこと。とある教師の言葉は、彼が屋上に引きずられていく前に得意げに呟いていたものだが、参考くらいにしておこう。
警戒させてしまった彼女への対処をあれこれと悩む白衣の後ろ姿、束ねた髪はあの尻尾のように静かに揺れている。
「痛いのとびっくりするのは嫌いだからねー、うーん」
「まあ、不本意とは言え自分のまいた種なので何とかしてきます。可愛い子に嫌われるのも痛いんでね。はっはっは」
もとの通りに人形をはめ直すのを見て何のつもりかと不審がる先輩に軽く手を振って、無責任な言葉を残す。力無い空笑いの最後にかん高く短い笑いを付け足せば、ぎょっとした表情と共にクラスメイトの動きが停止した。野次馬を牽制出来たのは幸いとその間を縫うようにして、増長はふらふらと不機嫌な子猫を探しに教室を出ていった。


***


自分にとっては不気味で得体の知れないそれが、逃げてきたはずの他学年の使用する廊下に居る。よく見えないが忙しそうに手を動かしているのはわかる。人形を持っている本人事態は涼しい顔だが、切り取られた胴体は腕を入れ指を動かして使うという目的を示している、当然あのいたずらをしたのは増長自身。ほんのささいな悪心でも、まるであの表情のない口の大きなおもちゃのように使い手の考えも読めないという恐怖はただでさえ無い彼女の信用をさらに失わせるのに十分だった。何やらポケットを探っていたようだが、顔や頬のあたりを押さえる動作に変わる。やがてぴたりとせわしい仕草をとめてこちらを向いたビーズの眼が自分と合って、悪寒に思わず尾が毛羽立つ。跳ねたそれがややあって内向きに降りてくる。伏せられた耳、敵意というより少しばかり恐怖の感情を持っているであろうその様相には構わず及び腰な少女に近づき、拒絶かもしくは防御のつもりなのかもしれない前方向に引き寄せたまま構えられた手の片方、その指先を静かに人形の口で挟んだ。
「にゃっ、な、なに」
返事はない。最初はほんの僅か、次は飲み込むように第一関節に進む。咀嚼のように器用に進んでいく所作は異様ではあったが布や綿で出来ているということもあって大した拘束力はない。やや力の弱い身であっても振り払うことは可能だったが、目的の見えないアプローチが新しいいたずらなのか、それとも何か意味があるのかが判断できず眼鏡の奥の眠たそうな眼に怯えるようにして、固まったまま子猫は立ちすくんでいた。
「まぁ、ちゃ、う・・・にゃ・・・・・」
感触自体は何の変哲もない布がゆっくりゆっくり皮膚を滑る。手のひらの中程までが口の中に埋まり、最後に数回やんわりとかみしめるような動作を見せて、ようやく件の人形は離れていった。いや、何度か手を食べる動作の時に別の質量が触れた。解放された手のなかには飴玉が一つ。
はっと顔を上げれば、同じ動作でポケットをまさぐり新しいキャンディを取り出して、丁寧に口に含む素振りを見せる愛嬌のある鼠の表情。
「お詫びです」
簡素化された両手で挟むように包装の端を掴ませた姿は手を合わせて懇願するようにも見える。人形の手には余る荷物を再びポケットへ詰め直して、お次は頭を押さえてしょげかえる風貌を表す。
今度こそ役目を終えた人形を取り去って、上着の大きなポケットに無造作に放り込む。ゴムの靴底が捻った反響音と翻る服の裾の揺らめきに軽い靴音が混じって、背を向けた彼女の人形を持っていなかった腕へ控えめに触れた。
「・・・・・・あめ。全部」

意外そうな表情が、安堵と好感の笑みに変わる。
さて、一体いくつで許してもらえるだろう。味をしめたのかパペット伝てに渡そうとすればしがみつくように隠れた瞬間右腕へしっかり爪を立てられ慌ててもう一度仕舞い込む。一緒くたに詰め込まれた色とりどりのセロファンの包みを漁りながら、はちみつ色の球を頬張ってほんの少しだけ機嫌を直した夜臼を連れてコートの姿が階段の奥に消えていった。


+++
今回の目標:出来るだけどうでもいい情報をダラダラ書こう!!
はい、という訳で猫市さんに有難くも書いて頂いたゆうちゃんいたずら大作戦~出来れば蹴りも下さい~の後時系列を作らせて頂きました。どうやってこじれた仲を修復するのかがテーマだったので増長の無駄なアクティブさとクズっぷりを全力で発揮。パペット人形でおててかぷかぷは十六茶のCMが元ネタです。だってあれエロくないですか、やられてる方。読んでてイラッとしたら目論見通りです。何だろうこいつは。どうでも良いけど一度も謝ってねぇこのクズ。
タイトルはまんまです。キャラ化学より三名借りさせて頂きました。かわいい女の子の出てくる話は楽しいですね・・・猫市さん、有難う御座いました!!

ハハッ!
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