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「夜臼さん」   わたしの少しだけ苦手なこと。頭をなでたり、お菓子をくれたり、いつも話を聞いてくれるその人が、こうして名前を呼ぶとき。みんな同じように、とても丁寧に話しかける。いつもどおりの静かでやさしい声が、なぜだかプラスチックみたいに聞こえてしまう、そんなとき。 (夜臼+増長)

「悪役になりたいんですか」「穿ち過ぎですよ」「小生はまともに卒業したいだけなんですがね」「こんな世界で何を遠慮する事があるんです」「生来貧乏性なもので」「勿体無い」「あと、メタ発言キャラは死なないというジンクスが」「そう上手く行くと思っていますか」「こんな世界ではそれくらいしか信じられませんから」 (増長+皇)

両の手に三箇所。巻かれた絆創膏が躊躇なく剥がされていく。糊のきいたテープに引っ張られた皮膚から血が滲んでも増長は睫一本動かさない。「傷口を塞ぐのは良くないですよ」 取り出された小瓶をもぎ取るようにして雑多なポケットへ放り込み、自分でやりますと丁重に断りを入れまだ何か言いたげな皇から立ち去った。(増長+皇)

「良いものなんですか」 締めるという感覚は。落陽の逆光に映し出された影法師、襟首を搦め捕るように掴む右手に吊された陰が問うた。「良いですよ。悲壮が困惑、絶望へ混濁していく表情というのは」「そう思っているのを見下ろさせて頂くのも、悪く」 途切れた言葉は、白む程に首筋を押し上げる左手によって掠れた吐息へと変えられた。 (皇+増長)

持ち込まれたのは小さな鉢。花壇の土を入れただけらしく、砂利の混じった表層には雑草が繁茂している。「詰草ですか、三つ葉ばかり」「ラッキークローバーは踏まれる場所にしかないそうですから」「裂傷奇形によるものですね。よくご存じで」 四つ葉には富、名声、愛情、健康の意。先生には全く似合いませんのでと嘯く彼女は、さて花言葉まで知っているのだろうかと一人ごちた。(増長+皇)

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地味に増えてきたので五本刻みに纏めました。相変わらず敬称略でキャラをお借りしてます
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