教室の片隅、放置された段ボール箱の陰に身を隠す少女が居た。「いいい今中さんッ おっ追われてるんで匿ってくださいっ」「うわああああ何奴!? と言うか誰に?」「銀さんに」「何したの」「酒の携帯がバレた」「‥‥‥」「や、製菓用なんすけどね」 痛い沈黙の中、静かに教室の後ろ扉が開かれた。 (増長+今中)
どうぞ、と差し出されたのは小さな飴玉。丸い粒からはほのかに花の香りと柔らかな甘さが広がった。目は醒めましたか?と微笑むその人は、暗いお天気なのにとても楽しそうに飴のひとつを口に含む。帰るまでにはこの雨も止む、きっと。きらきら光る空色のつつみ紙を、わたしはそっとポケットに仕舞った。 (夜臼+増長)
「何聴いてるんすか」「本部との連絡。教える訳にはいきません」「音、洩れてます」 驚いた様子で指し示した左耳を押さえた少女は、ややあって降伏のつもりかイヤホンの片方を差し出す。「‥‥今月出た新譜」「良いですよね、あれ」 窓際に二人、一つのプレーヤーを挟んで佇む。始業まで、あと五分。 (増長+今中)
伏せた耳を避け優しく撫でてやる。その指が逡巡し、ついと髪の幾束かを掬う。 「(良い、匂いだ)」 気付かれないよう静かな口付けを落とした瞬間、大きな目がこちらを向き――頬に何かが触れた。 「えへへ‥‥お返し」 ね、と小首を傾げた彼女に、増長は苦笑してまた頭に手を乗せた。 (増長+夜臼)
ほんの手慰みに作ってみただけの玩具。せいぜい気でも惹ければいいと持参したそれのあどけない表情が、こちらを笑っているように見えてささいな欲心が首をもたげた。ただ向かうのではつまらない。余計なことを試すのは信条で、その柔らかな笑顔が見えない背後に歩み寄り隠された左手でカウントダウンを始めた。 (増長+夜臼)
+++
TWITTERに流した小文まとめ。敬称略であちこちからキャラを借りさせて頂いてます。PR