「小生は弁天能寺さんのお人柄を強くお勧めしているのですが、芳しくないですね。押しが足りないと見える」 机を三つ以上挟んでの小さな内緒話は、そう締め括られた。白銀の髪の少女は、返事の代わりに笑顔で右手を差し出す。掛けていた眼鏡をやむなしと受け渡し、増長もまた薄く微笑みを返した。 (増長+弁天能寺)
掌は、体温を測るはずの額の下に据えられた。指先よりも幾分感覚の鈍いそこに、硝子体の張りつめた抵抗感が触れる。うつつにもむずがるように、数度瞬きが繰り返されるが押さえつけられているため瞼が開くことはなく皮膚を僅かに擦って手の下で脈動する。「鏡藍さん」 眼鏡を取ってもらえますか。と、裸眼の少女が囁いた。 (鏡藍+増長)
「黄色いマントを頂きましょう」 ―――仕方ない、と小さな呻きを残して重苦しい気配が消える。扉を叩くのは、放課後の怪異ではなく見知った声音だった。黄色は赤や青と並ぶ混ぜて作ることの出来ない有彩色。つまり血塗れでも蒼白でもない通常の状態を表す。只のハッタリでしたが通用するもんですねぇとから笑う姿に、覚えず安堵の声を漏らした。(増長+赤間+?)
乾いた音を立てて叩かれた手の甲を返して皇が酷薄な笑みを浮かべる。「まあ、そうなりますよね」「人の首を絞めかけておいて言う事がそれですか」「いえね、同じ事をしたんです。ある人に」「・・・」 「振り払うどころか、真っ直ぐこちらに腕を伸ばしてきたんですよ。私の、ここにね」 指し示したのは襟に隠れた首筋。怖い怖い、と呟くその横顔が、ふと歪んだように見えた。(皇+(増長)+花乃)
「菓子で釣れるかもしれないっすね」 出会い頭に脚払いからの馬乗りというご挨拶を受けつつ、小生の境遇を羨んですらいるという彼女の怒濤のような心境の吐露にまずは一般論を提示した。感情や欲求が先行してしまいがちな素直さは、物理で叩けば大体何とかなるという期待を嫌でも持たせられる。どうせ始終脳を酷使しているのだ。栄養過多になるくらい甘ったるいものをくれてやったらいいですよと、駄目押しに付け足した。 (増長+伊江藤)
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幅広い交流をとろうSSS第三弾。PR